蓼科ガストロノミー 春の芽吹き

世界中で地域性を色濃く映した料理が注目されている。

そのエリアの伝統的な食文化とその背景にある歴史を見つめ直し食材に敬意をはらってモダンな感性で創り上げられる料理である。今春、蓼科で春の芽吹きとともに新たな食の物語が綴られることになった。これを“蓼科ガストロノミー”と名付けたいと思う。

 

Carne
信州プレミアム牛肉の瞬間グリル
芳醇な赤ワインソース 山菜と季節野菜の菜園仕立て

香り・口どけ・適度なサシで肉好きの間でも人気の高い信州プレミアム牛肉を、その美味しさを瞬間で閉じ込める贅沢な調理法で仕上げたのがこのひと皿。超高温で瞬間グリルして、あとは余熱で肉を休ませると、牛肉は旨味をたたえて美味となり、お客様のテーブルへ。そしてメニュー名のとおり、山菜の苦みや春にんじんの甘み、ビーツの酸味などが菜園のように彩られ、信州・小諸のワイナリー「Terre de ciel」の赤ワインを使ったソースがコクを添えている。

 

Antipasto
彩り野菜のバーニャカウダ
信州味噌とアカシアのはちみつ 安曇野の清冽な水で育った信州サーモン

蓼科で育った料理長の小川には、採れたて野菜を砂糖と味噌を混ぜ合わせたものにつけて食べていた子どものころの思い出があるそうで、これはそのイメージで創作された前菜のバーニャカウダ。地元農家から朝採れの野菜が集まってくる市場に出かけ、旬の美味しい野菜を仕入れてくる。ソースは、アンチョビベースに信州味噌とアカシアのはちみつを合わせたもの。

 

Pesce
鮑を岩塩とハーブを練りこんだ生地で包み焼きに
信州産アスパラガスを添えて

川魚で育った料理長にとって、海の魚の豊富さに圧倒された鳥羽での経験は、料理人人生を大きく変革させた。
鮑との出会いもそのひとつで、今では料理長のスペシャリテになっている。が、このメニューの主役はアスパラガスだと断言。旬を迎えた太くジューシーなアスパラガスのみずみずしさには木いちごヴィネガーの香りと焦がしバターのソースがぴったり合う。

 

Pasta
スパゲッティーニ
車海老と答志島のからすみ 信州クレソンのソース

きれいな沢に生えていたクレソンの鮮烈な、そして圧倒的な香りとほんのりした苦みが忘れられないという思いを込めて、春先のクレソンの美味しさをパスタソースに。車海老の身がクレソンのやわらかな味わいにくるまれて独特の甘みに。車海老の頭の部分はサクサクの素揚げにして食感のバリエーションを創り出し、からすみの旨みがアクセントを加えている。

 

 

春から初夏にかけて、信州・蓼科は一年でいちばん美しい季節を迎える。若い芽が吹き、山々はやわらかな緑色に染まって、ところどころに可憐な花が咲き、鳥たちのさえずりが聴こえてくる。厳しい冬を乗り越えて迎えた春は、地元の人にとっても鮮やかな色彩の風景だ。

そしてこの景色を懐かしく見つめ、子どものころに食べた美味なる記憶を呼び覚まし、それを地方のガストロノミーとして創り上げる料理人がいる。今年の1月からイタリア料理「ルッチコーレ」の料理長に就任した小川良彦である。

 

料理長は、蓼科で生まれ育った生粋の信州っ子。小学生のころから父に連れられて山で猟をしたり、澄んだ沢ではクレソンを摘み、採れたての野菜と味噌の相性を知らず識らずのうちに教えられたり。地元食材の新鮮がゆえの鮮烈な香りとやわらかな食感、強烈な色彩、そして深い滋味をよく知っている。

東京のレストランで料理人人生をスタートさせたが、エクシブに入社後は、蓼科をはじめ、鳥羽・有馬・京都と独特の地域性を身につけてきた。そして生まれ育った蓼科に着任し、ここでしか表現できない美食の風景を、自らの思い出と今までの経験をもとにした〝蓼科ガストロノミー〞として、これから創出していきたいと語る。料理長が生み出す、新しいクリエイションに大いに期待を寄せたい。

 

Pesce
300度のオーブンで焼き上げたココット
信州きのこと帆立貝のアヒージョ仕立て

新鮮な野菜と魚介をもっとも美味しくいただくには、高温のココットで一気に蒸し焼きにするのがいちばん、と料理長。きのこと帆立から出る旨味がオリーブオイルとバランスよく混ざって互いの味を高め合うのである。そしてオリーブオイルは毎年イタリアのシチリア島から仕入れているもの。春から初夏にかけては若々しいオリーブオイルと魚介の相性も楽しんでいただきたいと語る。

 

Dolce
長門牧場のクリームチーズと信州産さくらんぼのミルフィーユ
真澄うめ酒と八ヶ岳高原ヨーグルトのジェラート

「真澄」とは信州・諏訪の酒蔵で、1662年創業の歴史ある蔵元である。ここのうめ酒と合わせたのが、同じくバラ科のさくらんぼ。旬を迎えた信州産さくらんぼの酸味と甘みの程よいバランスに、クリームチーズやヨーグルトの乳製品、食感にアクセントを出す自家製パイ生地でミルフィーユに仕立ててある。

 

 

エクシブ蓼科 イタリア料理「ルッチコーレ」
料理長 小川 良彦 Yoshihiko Ogawa

エクシブ蓼科オープンの時にフランス料理スタッフとして入社。2005年から鳥羽、有馬離宮、京都 八瀬離宮にてエクシブで料理長を歴任し、2023年1月より蓼科の洋食料理長として凱旋就任。食材の産地や新鮮さにこだわりを持つことはもちろん、漁師や農家などの生産者も料理の作り手の一人として大切にしている。

 

 

エクシブ蓼科 イタリア料理 「ルッチコーレ」
推奨コース「チェーロ」
ご提供期間/2023年4月5日(水)~2023年6月20日(火)
料金/14,520円(税込) 前日17:00までの要予約

 


※上記金額に別途サービス料10%を申し受けます。
※料理写真はコース料理(全8品)の一部を抜粋したものでイメージです。
※仕入状況などにより提供期間・料理内容が変更となる場合がございます。
※会報誌マイリゾートvol.125(2023年3月10日発行)掲載内容。

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